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盆栽と植物ホルモン

更新日:2020/02/13

盆栽と植物ホルモンの関係

一見活動していないように見える植物は、光や温度などの環境変化や、接触、重力などの物理的刺激など様々な刺激を敏感に感じ取り活発に生きています。

動けない植物にとって、周りの環境に応答することは自身が生き延び子孫を残すために欠かせない能力。

枝や根が伸びるべき方向に伸びたり、寒さに弱い新芽が真冬に芽吹くことがないのは、まさに植物ホルモンという化学物質が複雑に作用しているためです。

1. 植物ホルモンとは

植物ホルモンとは

「植物ホルモン」は植物の体内で作られる化学物質で、外界の様々な刺激を感じ取り、それに応答し体内で様々な生理作用を引き起こす情報伝達物質の総称。

植物ホルモンという言葉の定義は、「植物自身が作り出し、植物体内に普遍的に存在する物質で、微量で自身の生理活性・情報伝達を調節する機能を持ち、その化学組成や生理作用が明らかにされた物質」とされます。

最初は脊椎動物における特定の内分泌腺の活動に関与する「動物ホルモン」にならって使われるようなりましたが、研究が進むにつれて動物の持つホルモンの機能とは明確な違いがあることが解りました。

それは植物ホルモンが作られる場所や、作用する器官が必ずしも明確でなく、同じ物質でも作用する場所や濃度の違いによって異なる生理活性が見られるという点。

さらにホルモン同士の相互作用によっても働きが変わるため、その役割を一概に説明する事は難しく、現在も様々な研究が進められ新たな発見がなされています。

植物ホルモンが作用する仕組み

植物体内の特定の場所で合成された植物ホルモンは、まず細胞内や細胞壁内の存在する受容体(植物ホルモン受容体タンパク質)と結合します。

特定の植物ホルモンと結合した受容体は核や細胞膜などに情報を伝達し、様々な遺伝子発現や酵素活性の調節、細胞内外へのイオンの輸送などを制御しています。

植物ホルモンは単独、あるいはいくつかの物質が複雑に作用し、あるときは植物の成長を促進、またあるときは抑制する働きを担っています。

植物ホルモンが作用する仕組み

図:細胞が植物ホルモンを感じる流れ

2. 主な植物ホルモンとその働き

現在見つかっている植物ホルモンは「オーキシン」「エチレン」をはじめ、「ジベレリン」「サイトカイニン」「アブシジン酸」「サルチル酸」「ジャスモン酸」「ブラシノステロイド」「ストリゴラクトン」と、幻の植物ホルモンと言われる「フロリゲン(花成ホルモン)」の10種。

これらの植物ホルモンが植物の体内でどのように作用しているのかは、積み重ねられてきた植物学者の研究によってほぼ解明されつつあります。

他にも多くの正体不明な微量物質の存在が分かっていて、これらがお互いに作用しながら植物の生長に関与していると考えられています。

オーキシン(auxin)

植物を成長させるオーキシン

オーキシン

オーキシンの1種である3-インドール酢酸の構造式(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

植物ホルモンの代表選手といえばオーキシン。このオーキシンの存在に最初に着目した人物は、『種の起源』で有名なイギリスの自然科学者「チャールズ・ロバート・ダーウィン」です。

ダーウィンは、なぜ芽生えは光の方向に曲がるのか不思議に思いオーキシンの存在を突き止めました。その構造が決定されたのは後の事ですが、世界で最初に発見された植物ホルモンとして代表的な物質です。

オーキシンの主な働きは「植物を成長させること」です。

オーキシンは主に茎の先端部分(頂芽)で生成され、重力に関係なく頂芽から根の方向へ移動します(極性移動)。

茎先端の芽には茎頂分裂組織という部位があり、細胞分裂によって新しい葉や茎が伸びていきます。同じように根の先端にも「根端分裂組織」という部位があり、そこから細かく根が複雑に分岐しながら大きくなっていきます。

このように、オーキシンの濃度が最適となった部位では、細胞の数を増やしたり、細胞そのものを大きする働きをします。

頂芽優性を司るオーキシンとサイトカイニン

植物には頂芽優性という性質がありますが、それにはオーキシンとサイトカイニン(※後述)の2つの植物ホルモンの相互作用が関係しています。

主に茎や根で作られるサイトカイニンは、細胞分裂やシュート(地上部)形成の誘導機能を持っていますが、同時にオーキシンの存在下で側芽抑制を解除するスイッチの役割を備えています。

頂芽でオーキシンがたくさん作られている時は、サイトカイニンの発現遺伝子がオーキシンによって抑制されているため、側芽は休眠状態に入ります。そこで頂芽が失われると、オーキシンの流れが途絶えサイトカイニンの生合成が開始。頂芽に一番近い側芽が目を覚まし、頂芽となって伸長を始めるようになります(頂芽優性)。

オーキシンは作用する場所や濃度の違いによって異なる生理活性が見られ、成長促進に最適な濃度では伸長成長をしますが、高すぎると逆に成長を抑制します。

また、特定の濃度のオーキシンは細胞の位置関係を決める信号として機能したり、ある細胞を別の細胞へと分化させる働きも持っています。

成長に最適なオーキシンの濃度は根<芽<茎の順で、茎で最適な濃度になっている時は、根では成長が抑制されるようになっています。オーキシンは濃度による巧みな成長の促進と抑制機能を使い、枝を光の方向へ曲げたり(屈光性)、根を下に伸ばしたり(屈地性)しているのです。

オーキシンの主な作用

茎や梢葉の伸長、側芽の伸長抑制、光や重力による屈曲、不定根や分岐根の生成、発根促進、根の伸長の抑制、木部の分化、果実の成熟、落葉・落花抑制、形成層の活性、葉の老化など

エチレン(ethene)

果実を追熟する気体ホルモン

エチレン

エチレンの構造式(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

エチレンは直物ホルモンの中でも珍しい気体ホルモンです。

19~20世紀にヨーロッパで見つかった物質で、ガス灯の近くの樹が正常に生長しないことから発見されました。

代表的な働きは、果実の追熟(後熟)作用、開花の促進、茎の成長の阻害や肥大成長促進など。

エチレンの生理作用は広く多様で、その発現の仕組みについては不明な点が多く残っていますが、植物体内で細胞成分の金属(胴)と結合して作用するものと考えられています。

このエチレンの生成過程にはオーキシンが促進的に作用していて、高濃度のオーキシンがエチレンの生成を促進することが解っています。

ストレスに耐えるためのエチレン

エチレンのもつ作用の一般的なものには、老化を促進する働きと、外部のストレスから身を守ることがあります。

エチレンの中間代謝物(酸化エチレン)の殺菌力は強く、外部からの微生物の侵入を防ぐ働きをしています。

と同時に、植物の体が害獣・害虫などの食害や雨風、病気などによって損傷を受けた時、ストレスに晒されていることを外部に伝える情報伝達物資としての役割も持っています。

自然の樹を見てみると、酷く病気にかかった特定の樹の周りの樹はなんら障害が出ていないことがあります。昔の人はその樹が自ら犠牲となって、害虫を引き寄せる何かを出しているのではないかと考えていました。

このエチレンの防御機能と似た物質に「サルチル酸(後述)」がありますが、されらの植物ホルモンはストレスに晒された時、植物体内の細胞同士あるいは離れた個体同士で互いに情報伝達し、自身の抵抗性を上げて防御に備えていると考えられます。

盆栽はスキンシップ

果実の追熟で知られているように、エチレンには成長を促進する効果がある一方、物理的な接触を感じると成長が抑制されたり、茎を太くして身を守ろうとすることが解っています。

これは盆栽の培養において時に有益な反応で、剪定や芽摘み、針金掛けをはじめ、葉水を打ったり幹肌を歯ブラシでこすったり、土を硬く締めるたりすることで植物にストレスを与え、その物理的刺激により生成されたエチレンの作用で縦方向の伸張を抑制し、横に肥大する原理を巧みに利用しているのです。

また、エチレンの働きは伸張を抑制するだけでなく、花物類や実物類の場合は花芽分化も促進させますから、盆栽とは切り離せないホルモンと言えます。

毎日手入れすることで盆栽は小さくなります。

人間関係だけでなく、盆栽にもスキンシップは大切なものなのかもしれません。

エチレンの主な作用

伸長生長阻害、側枝の伸張促進、肥大成長促進、小枝の発生促進、開花の促進、果実の成熟促進、葉・花または果実の脱離促進、葉緑素の分解促進、呼吸作用の促進、タンパク質合成の促進、老化促進、雄花の雌花化、球根の休眠打破、耐病性の増大など

ジベレリン(gibberellin)

イネ馬鹿苗病の原因カビから見つかった植物ホルモン

ジベレリン

ジベレリンA3の構造式(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

ジベレリンは元々、稲の穂が異常に伸張し、穂を出さずに枯れてしまう「イネ馬鹿苗病」で知られる植物ホルモンです。

戦前に台湾の農業試験場に勤務していた研究者の黒沢英一氏が「ジベレラ」というカビが稲に感染することで発症していることを突き止めました。

その後引き継がれた研究で、1926年にその馬鹿苗病菌を培養・単離することに成功し、バカナエ病の学名( Gibberella fujikuroi )にちなんで命名されたのがジベレリンです。

第二次世界大戦後に一連の研究成果が世界に発表されるとさらに研究が進み、カビだけでなく多くの植物の未熟種子や徒長枝から見つかり、植物の成長発育に重要な役割を果たしていることが分かりました。

最初に見つかったジベレリンは「ジベレリンA」と「ジベレリンB」の2つですが、その後の世界的な研究で同様の働きをする化学構造の似た物質が100種類以上見つかり、それらを総称してジベレリンと呼んでいます。

茎の背丈を伸ばす

ジベレリンの主な生理作用は、植物の茎の成長を促進することです。

成長中の部分の伸張成長だけを促進し、同時に側芽の生長を抑える働きもしています。

日が長くならないと花芽が形成されない長日植物にジベレリン処理をすると、短日条件でも花芽が形成されることや、発芽に光が必要な種子の暗条件下での発芽を促進することも知られています。

ジベレリンの着果促進作用と矮化

ジベレリンは、茎の背丈を大きくしたり果実の着果・肥大を促進する作用がある点でオーキシンと似た働きをすることが解っています。

植物調整剤としてのジベレリンは種なし果樹(葡萄)の生産に大変役立っている植物ホルモン剤で、単為結果(受精なしで果実の肥大成長)を促進する働きがあります

盆樹では薔薇やロウヤ柿、茱萸(グミ)、ズミなどの実成りに有効で、オーキシン活性による着果効果のある「トマトトーン」とこのジベレリンの2種類の調整剤を持っている人が多いようです。

矮性種とジベレリン

自然界には背丈が伸びない矮性種が存在しますが、これらの矮性種はジベレリンやオーキシンを作る遺伝子に変異があることが解っています。

矮性種は一見、自然界で生き延びるには劣勢であるように思われますが、倒れにくく、沢山の実を収穫できる性質は農業や盆栽の世界ではむしろ好まれます。

背を伸ばす必要があまりない矮性種は、普通種が背を伸ばすために必要なエネルギーを果実や種子をつくる事に使うことができます。生産の現場ではその利点を得るために「矮化剤」と言われるジベレリンの生合成阻害剤が使われることもあります。

盆栽でも矮化剤を使ったり、芽吹きをよくするためにジベレリンを使う人はいますが、効果は一時的。

姫性、一才性として出回っている矮性の樹種は自然発生種を挿木や接木で繁殖させたものがほとんどです。

ジベレリンの主な作用

成長中の部分の伸張成長促進、花芽形成促進、花粉の発芽促進(自家不和合成植物への結実)、側芽の生長抑制、特定樹種の単為結果、種子の発芽促進など

サイトカイニン(cytokinin)

再分化を引き起こすサイトカイニン

サイトカイニン

天然サイトカイニンのゼアチン(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

オーキシンが見つかって間もなく、1920年ころから植物の組織培養の研究が盛んになり、2人のフランス人研究者が人参の切れ端にオーキシンを添加するとブクブクとカルス(未分化細胞)を形成することを発見しました。

このカルスの再分化を促進する物質として、アメリカの研究者がニシンの精子の古いDNAから分離した物質が「カイネチン」で、後にサイトカイニン(細胞分裂促進物質)と総称される植物ホルモンとして特定されました。

1957年になると、サイトカイニンはオーキシンと深く関係しながら作用していて、その濃度のバランスを調整することでカルスから根(不定根)や芽(不定芽)が再分化することが解りました。

相対的にオーキシンの濃度が高い時には根が、サイトカイニンが高い時には芽が生じます。

またサイトカイニンには根で作られて水とともに道管を通って地上部へ移動するものや、茎や頂部で作られて支管を通り根へ移動するものなどがあり、同時に根が吸収したチッ素栄養や光合成で得られた糖分を輸送することで地上部と地下部の情報伝達を行っていると考えられています。

その他、オーキシンには栄養分を積極的に集める性質や、葉からの蒸散促進(気孔を開く)、種子の発芽促進、林檎の単為結果、葡萄の着果促進、果実の肥大成長促進など多様な作用を持ちます。

サイトカイニンの主な作用

老化防止、蒸散促進、側芽の伸張促進、種子の発芽促進、単為結果(リンゴ)、着果促進(ブドウ)、果実の肥大成長促進など

アブシジン酸(abscisic acid)

落葉や落花、休眠を促進する抑制型ホルモン

アブシジン酸

(S)-(+)-アブシシン酸(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

1960年代後半、日本人研究者の大熊和彦氏が、葉の落葉や果実の落果に関係する物質として、綿の離層形成促進物質から最初に単離されたものがアブシジン酸(アブシジンⅡ)です。

アブシジンの語源は、落葉や落果を意味する「abscission」に由来して名付けられた言葉ですが、実はアブシジン酸が作用していると考えられていた果実の落下は、アブシジン酸が直接作用しているのではなく、アブシジン酸がエチレンの合成を促進することによって引き起こされていることが後に判明。

ほぼ同じ時期に種子や芽の休眠に関わる成長抑制物質「ドーミン」が発見されていて、実はこれがアブシジン酸と同じ化学構造の植物ホルモンだったのですが、大熊氏が先に化学構造を決定していたため「アブシジン酸」という言葉が定着することになりました。

アブシジン酸はオーキシンやジベレリンなどの成長を促進するタイプと違って、抑制型の植物ホルモンです。主な働きとしては、葉や果実の脱離や種子や芽の休眠誘導があります。

主に緑葉や果実で生成され、葉から茎、頂部など他の器官へ転送されます。

また、アブシジン酸はストレスホルモンとも呼ばれていて、葉の気孔を閉じて蒸散を防ぎ、乾燥や寒さに対しての耐久性を示すなど、不良環境では成長をいったん停止して、じっと耐える必要があるときに多く生産されます。

アブシジン酸の主な作用

葉や果実の脱離、種子や芽の休眠誘導、不良環境下(乾燥・灌水・高温・低温・栄養欠乏など)での耐性、気孔の閉口促進、蒸散抑制(気孔を閉じる)など

サルチル酸(salicylic acid)

外部に病気の感染を知らせ、「全身獲得抵抗性」を高める

サルチル酸

サルチル酸の化学構造(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

古代ギリシャの時代には既に柳(ヤナギ)から採取され、消炎鎮痛作用のある薬として利用されていた物質で、医薬品として改良されたものに現在の「アスピリン(アセチルサルチル酸)」があります。

サルチル酸の主な作用は、植物が病原菌やウィルスに感染した時に抗菌活性を示すこと

植物の免疫応答を誘導する物質で、感染した部位では大量のサルチル酸が生産され、それを全身に伝えて病原菌やウィルスに抵抗する酵素群を合成するシグナルとして機能します。

またサルチル酸には「メチルエステル体」と言われる揮発性の物質があり、離れた部位へも抵抗性を発揮する遺伝子の発現を促進する働きを持っています。

これは感染部位から離れた場所の細胞や他の植物に病気の感染を知らせ、予め全身の抵抗性を高める「全身獲得抵抗性」と言われる反応で、ストレスに晒されていることを外部に伝える情報伝達物資「エチレン」の働きに似ています。

サルチル酸の主な作用

病原菌感染時に植物の抵抗性を高める、外部へのストレスの情報発信など

ジャスモン酸(jasmonic acid)

環境ストレスへの耐性誘導ホルモン

ジャスモン酸

(−)-ジャスモン酸(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

ジャスミンの香り成分「ジャスモン酸メチル」と似た構造の物質で、ジャスモン酸メチルからメチル基(CH3)を分離した物質です。

1971年に微生物から見つかった成分で、1980年には日本人研究者がヨモギの一種から分離することに成功しました。

当初は植物の成長を阻害する植物ホルモンだと考えられていましたが、最近の研究でシャスモン酸単体では機能を持たず、イソロイシン(アミノ酸)と結合することでホルモンの働きをすることが解りました。

ジャスモン酸にはその他にも、果実の熟化や老化促進、休眠打破などを誘発する働きがあり、エチレンやアブシジン酸、サルチル酸などと同様に環境ストレスへの耐性を誘導するホルモンとして知られています。

病気や障害を受けると植物体内のジャスモン酸の濃度が上昇し、病害抵抗性遺伝子の発現を促進します。

また、雄しべの発達や花粉飛散、シロイヌナズナ蕾を開花させる活性をもつことも解っていて、他の植物で開花の促進が確認されれば「花成ホルモン(※後述)」として認定される可能性もあります。

ジャスモン酸の主な作用

果実の熟化、老化促進、休眠打破、開花促進(シロイヌナズナ)、環境ストレスへの耐性誘導など

ブラシノステロイド(brassinosteroid)

成長促進作用をもつもう一つの物質

ブラシノステロイド

ブラシノリド(ブラシノステロイドの一種)の構造式(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

1970年にアメリカの研究者がアブラナ(ブラシカ属)の花粉から分離した物質で、植物ホルモンでは珍しく動物の性ホルモンと同じようなステロイド骨格をもっています。

ブラシノステロイドは成長促進作用を持つ植物ホルモンで、他の植物ホルモンと比較しても非常に低い濃度て活性を示し、インゲンの節間生長をごく低量で促進したり、高濃度では茎の肥大を促進する働きをします。

発見された当初はオーキシンやジベレリンと似た働きをしていたために1つの植物ホルモンとして認定されるまでに時間がかかりましたが、他の植物ホルモンと相互に関係し、オーキシン活性やジベレリン活性、サイトカイニン活性効果を持つ植物ホルモンとして比較的新しく認定された物質。

ブラシノステロイドが作れなくなったシロイヌナズナの変異体では、背丈が伸びない矮性の性質を示すため、オーキシンやジベレリンだけでは細胞の伸長成長させることができないことも確認されています。

また、アブシジン酸と同じように、不良環境耐性効果も持ち、低温下での生育促進も確認されています。

ブラシノステロイドの主な作用

枝の伸張生長促進、茎の肥大、他の植物ホルモン活性、不良環境での耐性活性、着果促進、芽生えの光形態形成、道管細胞の分化、花粉管伸長、種の発芽促進など

ストリゴラクトン(Strigolactones)

菌根菌を呼び寄せる、枝分れ制御ホルモン

ストリゴラクトン

ストリゴラクトンの一般化学構造(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

「ストライガ」という半寄生植物の種子発芽を誘導する物質として発見、命名された植物ホルモンで、植物の根に共生する菌根菌の菌糸を呼び寄せる物質として知られていました。

菌根菌とは菌根を作って植物と共生する菌類のことで、土壌中に張り巡らした菌糸から、主にリン酸や窒素を吸収して宿主植物に供給し、代わりに植物が光合成により生産した炭素化合物を得ています。

多くの菌根菌は共生植物に対し成長促進効果を持ち、植物と菌根菌はお互いに助け合って生きている相利共生の関係にあります。

ストリゴラクトンは土壌のリン欠乏条件下において根で生産される物質で、菌根菌との共生を促進し、土壌中の水分や養分を効率よく吸収すると同時に、枝の分岐を抑制して過剰なリン酸の消費を抑えていると考えられます。

根で作られたストリゴラクトンは菌根菌を呼びながら、情報伝達物質として茎へと移動し、地上部(シュート)の枝分れを抑制して土壌条件に合わせて枝数を調整しているのです。

地下部(ルート)と地上部(シュート)のバランスは、植物が生きていく上で重要な要素。枝を伸ばして多くの葉を広げれば効率的に光合成ができますが、枝を作るにはその分沢山のエネルギーが必要となり、土壌の条件が悪い時には生理障害を起こす危険性があります。

ストリゴラクトンの持つ枝分れ制御機能は植物の頂芽優性の働きに繋がるものとして注目されている物質の1つですが、ストリゴラクトンの受容体タンパク質は植物ホルモンの中では唯一不明。そのメカニズムもまだ解明されていない部分が多く、現在もさまざまな研究が行われています。

ストリゴラクトンの主な作用

菌根菌の誘因、シュート(地上部)の枝分岐の制御など

フロリゲン(florigen)

花芽形成を誘導するシグナル物質

フロリゲン複合体

フロリゲン複合体の立体構造(出典:一般社団法人日本植物生理学会/みんなのひろば)

植物の花芽形成を誘導する「花成ホルモン」と言われる植物ホルモン(様物質)で、2007年に始めてその存在が確認されました。

葉で作られるフロリゲンは、葉から茎頂へ日長情報を伝達する働きをしていて、師管を通って茎頂の成長点に運ばれ、花芽形成を促進することが解っています。

フロリゲンの候補として最も有力なものには、1999年に京都大学の荒木らによってシロイヌナズナで発見されたFT遺伝子。2005年にはFT遺伝子と相互作用するFD遺伝子が新たに発見され、FT遺伝子が花芽形成において重要な役割を示すことが確認されています。

フロリゲンは1936年に提唱されてから長い間その実体が確認されていなかったため、幻の植物ホルモンと言われていた物質。

現在もその化学構造や詳細なメカニズムは不明な点が多く残っていて、植物科学のなかで最も注目を浴びる研究分野となっています。

フロリゲンの主な作用

花芽形成、開花促進など

3. 自然が創り出すいろいろな樹形

風の強い沿岸に自生する樹の姿
Nature of Bonsai

私の地元、唐津の虹の松原の松は、絶え間なく吹く海風(物理的刺激)にさらされて、自然樹ながら大盆栽のような造形美を現しています。

今にも倒れそうに這って生えている老樹の醸し出す風情は素晴らしいものです。

強風や寒波、落雷、積雪、雪崩などの天災の他、害虫や害獣などによる食害、病気など厳しい自然に耐えながら自生している植物の姿からは、朽ち果てていく物悲しさや美しさを感じ取ることができます。

盆栽はこのような自然樹の姿を模写するように、枝を途中で切ったり曲げることで人工的に刺激を与え、その樹の成長を調節しながら形造ってゆきます。

植物学という知見もまだない時代、昔の愛好家は植物の微細な反応を感じ取り、植物活性に基づいた培養法を現在に証明しています。

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都内のベランダから盆栽を始め、現在は盆栽のために郊外に土地を得て暮らしています。小さい盆栽を中心に山野草や鉢作りを楽しんでいます。

アビシニアン猫(♂)とメダカを飼っています。歴代猫は『アロ』『アズロ』。

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