盆栽と水石

盆栽と水石

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水石(すいせき)とは山水景石を総称した自然石のことです。

添配のように盆栽との組み合わせで景色の1つとして使ったりもしますが、主木に対する「受け」として、また遠山に見立て主としての役割もあり、盆栽と水石は切り離すことの出来ない深い結びつきがあります。

「趣味の極地は石にある」と言われるほど、水石には見るものの心に安らぎを与える奥深さや無限の魅力があり、水石と添配だけで景色を作る「水石飾り」や、鉢の中に石をすえて自然の峠や岩石などの景色を演出する「盆石」という遊びもあります。

盆栽に通じる水石の世界

第8回世界盆栽大会で展示された日本の水石展
(一般社団法人 日本水石協会)

水石を愛好する心は永く日本人に培われてきた感性で、何千年何億年と遠い昔から歴史を刻んできた自然のままの石に森羅万象を思い巡らすことができます。

水石は単に素材としての石ではなく、「わび」「さび」や禅の道とも一続きであり、盆栽や日本庭園、水墨画、生け花の精神に通じていると言われています。

人は自然の造化の技や機微に触れた時感動し、山水の風景を連想することができるように、石を知ることは盆栽の理解を深めることにも通じているという考えです。

水石の歴史

愛石趣味は、もとは南宋時代(1127年-1279年)の中国から日本へ伝わったとされています。

始めのうちは単に自然のままの石を身近に置いて楽しまれていたようですが、鎌倉・室町の時代には既に盆栽に石を添えて愛培されるようになり、後醍醐天皇を始め、織田信長や豊臣秀吉など当時の権力者の間にも愛石家が多くいました。

江戸時代以降になると、これまで権力者や上流階級の間で観賞されていた盆栽や水石は、庶民層の間へも広がりをみせ、盆栽の流行とともに愛石熱も高まりました。

盆の中に山水景観を表現する盆石の歴史も深く、盆栽と石は深い関係を結びながら盆栽培養の技術の向上とともに進化しています。

水石の条件と養石

いろいろな姿石

いろいろな姿石

屑谷石(左)、遠山石(右)

水石は見る者になにかを連想させる形であることが重要です。

石の形にもいろいろあり、山に見立てた山形石(古谷石)や、白い筋を滝に見立てた滝石、茅葺き屋根の民家に見立てた茅舎石、屑谷石、遠山石、島形石、水溜まり石、段石、渓流石、舟形石などの姿石や紋様石があります。

菊花石や梅花石のような模様の入った観賞石でも見せ方によっては水石として扱われ、砂を敷いた水盤の上に据えたり、木製の台座をこしらえてあります。

良い石の条件

加茂川八瀬石

佐治川石
(第8回世界盆栽大会:日本の水石100選より)

良い水石は、質や色形がよく、古色と品が備わっていることが条件といえます。

色は真黒が最高といわれ、続いて蒼黒、灰黒がよいとされますが、いずれも渋く落ち着いた味わいと品位が求められます。

質は硬さのなかにも柔らかな味わいのある緻密さが求められ、水をかけるといつまでもしっとりした色を呈する水保ちのよさも見所となります。

さらに水石には天然のままの自然さがあることも大切で、加工をしないことが原則です。

色石と言われるものや、山形石など市場に出回っているものの中には人工的に加工を施したものがありますが、このような加工石は水石とは一線を画されます。

また盆栽でも同じことが言えますが、どんなに色形が良い石でも古色や品格が備わっていけなればよい水石とはいえません。

養石

そのためには石に対しても盆栽の培養に相当する養石という作業が必要で、石に水をかけては日に当てて乾かす作業を何年も繰り返して時代を付けます。

石灰質の石は溶けることがあるので、乾いた布で拭いて養石します。

養石によって十分に時代が付くまでには少なくとも5年から10年はかかると言われていますが、質や色形に時代がついてなんとなく格があるというのが良い水石とされます。

水石の産地

水石はその岩肌の美しさや色形、質のよさから霊験あらかたな石として古から信仰されてきた霊石でもあります。

河川や湖、海岸、渓谷、山や峠を中心に各地に名産地があり、その山地により石質や色、造形に特徴を持ちます。

特に質が良く有名なものは北海道旭川市の神居古潭(かむいこたん)石や佐渡の赤玉石、揖斐川石、佐治川石、丹波石、 馬渕川石、三波石などたくさんの名産地が日本国内だけで80カ所以上あります。

水石の主な産地

図:水石の主な産地

番号産 地名 称
1北海道中川郡中川町誉平(ぽんぴら)石
2北海道旭川市神居古潭(かむいこたん)石
3北海道空知郡空知川(そらちがわ)石
4北海道空知郡南富良野町金山(かなやま)石
5北海道松前郡千軒(せんげん)石(松前古潭石)
6 北海道沙流郡平取町 沙流川(さるがわ)石・幸太郎石
7 北海道幌泉郡 豊似(とよに)石
8北海道幌泉郡襟裳(えりも)石
9 北海道津軽 津軽青(つがるせい)石
10岩手県北部および青森県南部馬淵川(まべちがわ)石
11 三陸海岸三陸海岸(さんりくかいがん)石
12 秋田県緑青(ろくしょう)石
13 岩手県北上川(きたかみかわ)石
14 山形県羽黒川(はぐろがわ)石
15 宮城県阿武隈川(あぶくまがわ)石・論田(ろんでん)石
16 山形県黒鴨(くろがも)石
17 新潟県仙見川(せんみがわ)石
18 新潟県八海山(はっかいさん)石・阿賀野川(あがのがわ)石
19 新潟県佐渡島佐渡赤玉(さどあかだま)石
20 山形県只見川(ただみがわ)石
21 茨城県北部~宮城県南部好間川(よしまがわ)石・田代原(たしろはら)石・好間田代山(よしまたしろやま)石
22 福島県伊南川(いながわ)石
23 栃木県久慈川(くじがわ)石
24 栃木県渡良瀬川(わたらせがわ)石
25 群馬県、埼玉県三波(さんば)石
26 東京都秩父地方秩父(ちちぶ)石
27 多摩川水系多摩川(たまがわ)石
28 神奈川県相模川(さがみがわ)石
29 山梨県富士川(ふじがわ)石・早川(はやかわ)石
30 静岡県安倍川(あべかわ)石
31 静岡県瀬戸の谷(せとのたに)石
32 長野県天龍川(てんりゅうがわ)石
33 長野県日本アルプス石
34 栃木県桐生(きりゅう)石
35 栃木県荒井川(あらいがわ)石
36 群馬県武尊(ほたか)石
37 新潟県青海川(おうみがわ)石
38 新潟県姫川(ひめかわ)石
39 石川県能登(のと)銀石
40 石川県能登有磯(ありいそ)石
41 石川県、岐阜県白山(しらやま)紋石
42 岐阜県荒城川(あらきがわ)石
43 長野県宮川(みやがわ)石
44 山梨県釜無川(かまなしがわ)石
45 静岡県三倉(みくら)石
46 愛知県土岐(とき)石
47 愛知県庄内川(しょうないがわ)石
48 岐阜県根尾川(ねおがわ)石
49 岐阜県九頭龍川(くずりゅうがわ)石
50 岐阜県泉岳(せんがく)石
51 岐阜県菊花(きっか)石
52 福井県越前(えちぜん)紋石
53 岐阜県揖斐川(いびがわ)石・粕川(かすかわ)石
54 滋賀県姉川(あねかわ)石
55 滋賀県瀬田川(せたがわ)石
56 三重県鎧(よろい)石
57 和歌山県那智(なち)黒石
58 和歌山県古谷(ふるや)石
59 兵庫県丹波(たんば)石
60 京都府加茂川(かもがわ)石
61 鳥取県佐治川(さじがわ)石
62 鳥取県八頭郡若桜三倉(わかさみくら)石
63 島根県富金(ふきん)石
64 島根県音部(おとべ)石
65 山口県菊(きく)石
66 岡山県高梁川(たかはしがわ)石
67 岡山県小田郡矢掛町矢掛(やかげ)石
68 徳島県勝浦梅林(かつうらばいりん)石
69 高知県土佐(とさ)菊花石
70 愛媛県伊予(いよ)青石
71 高知県四万十川(しまんとがわ)石
72 高知県抹香(まっこう)石
73 福岡県糟屋郡篠栗(ささぐり)石・梅花(ばいか)石
74 福岡県北九州市千仏(せんぶつ)石
75 大分県臼杵(うすき)石
76 熊本県球磨川(くまがわ)石
77 鹿児島県宮田(とみた)石
78 鹿児島県御在所(ございしょ)石
79 宮崎県紫古(しこ)錦石
80 宮崎県黒北(くろきた)石

コメント

一刻亮 さん 2019年12月11日05時08分
1番、誉平石はポンピラ石ですよ♪♪♪
キミさん沢山勉強してるのですね、驚きです。
画像はわたくし自慢のポンピラ石です。北海道より持ち帰った石です。
きみ さん 2019年12月11日10時43分
一刻亮さん
ご指摘くださいましてありがとうございました!
修正してお詫びします。
一刻亮さんには当たり前というか物足りない内容だと思います(汗
ほんとうに良い石ですね、、最高ですね、、探石してこんな石があったら腰抜かしそうです。
藤原勝利 さん 2022年04月30日18時44分
水石٠盆石を、鉢(又は水盤)に飾る時の砂の色は何色が基本ですか?。
茶色or 白砂?。
きみ さん 2022年05月02日10時18分
藤原勝利 さんへ

こんにちはコメントありがとうございます。
私は水石についてもの申せる程のものではなく大変恐縮なコメントなのですが、砂の色は飾る石の色味や質感などによって合うものが違います。

基本的に砂は、ちょっと黄色味かかった(肌色?)白っぽいものが合うと思います。

やはり石がメインですので、石が引き立つようなものがよさそうですね。
あと、水を打つので、打った時に色が変わりすぎないもの。まだらになったりすると美しくないので、そういうことも考えて砂を選ぶとよいと思います。