トショウ(杜松)の魅力

投稿日:2018年05月15日 更新日:2022/07/14

杜松

トショウ(杜松、Juniperus rigida Sieb. et Zucc)はヒノキ科ビャクシン属の常緑針葉高木。

日本の山地の尾根や岩場などに自生があり、近い仲間は朝鮮半島や中国にも分布があります。

トショウという名前は主に盆栽界での呼称で、葉先がとがっていて触ると痛いのが特徴。この硬い針葉をネズミの通り道に置いてネズミ除けに使っていたことから、ネズミサシやネズの名で呼ばれています。

同じビャクシン属のシンパク(深山ビャクシン)と近い仲間で、稀に自生の老木では鱗片葉も見られるようですが、基本的には鋭いスギ葉型のみです。

トショウには大きく分けて立ち性のものの他、横臥(おうが)性や這い性のものがあり、枝の付き方や葉性が若干異なります。ジン・シャリを抱えた迫力ある大物盆栽に適しているのは立ち性のものや横臥性のものですが、石付きや懸崖仕立てなどの樹形や小品サイズで作る場合は這い性のものが向いていて、紫トショウや八房種は這い性の性質を備えています。

古色のある幹肌と、裸子植物特有の原始的でありながらどことなく当世風な葉性が魅力で、丈夫で萌芽力があり、芽摘みや切込み剪定にも強く枝が作りやすいところが好まれます。

杜松の種類

オキナワハイネズ

絶滅危惧植物に指定されている
沖縄ハイネズ:つくば実験植物園

トショウには針葉樹らしく直立し、時には株立ち状になる立ち性種と、地面や岩上を這って生息する這い性種があり、それぞれ「立ちネズ」「這いネズ」と呼ばれています。

立ち性のトショウ(立ちネズ、ムロノキ、モロノキとも)は東北地方以南の丘陵や山地に自生がある種類で、太幹の大物盆栽によく仕立てられます。

一方、山地~低山帯の他、海岸近くにも分布が多い這い性のトショウ(這いネズ)は、葉が比較的柔らかく扱いやすいために苗木の流通も多く、樹高を低く作ることができるので小品盆栽向きです。

葉性も多様で、「山杜松」と言われる長く鋭いもの(ネズミサシ)や、ややすぼまった八房性、丸味がありやや厚い葉性(紫杜松、白杜松、ミヤマネズなど)があり、自然界ではそれらの中間種や変種も数多くあります。

杜松の葉

ネズミサシの葉(左)とハイネズの葉(右)

自生地によっても葉性に個性があり、変種の「オオシマハイネズ」などは葉が柔らかく草のような感じ。

ハイネズや八房性も葉が柔らかいので手入れがしやすく、挿木での個人繁殖も簡単です。

触ると痛いネズミサシ(山杜松)も野趣があり、昔は多く作られていたようですが、ほとんどが山採りだったため近年は数が少なくなっています。

ソナレ

ソナレの葉

また、海岸に自生がある匍匐性のソナレ(ハイビャクシン)も盆栽向きで、やや丸味のある優しい色合いの葉性と、刈り込みに強い丈夫な性質から園芸植物(コニファー)としても利用されています。

トショウの増やし方

トショウの素材木は主に挿木で増やされています。

挿木したものは数年そのまま肥培して樹勢を付け、枝もそのまま走らせておくことで早く幹が太ります。

挿し穂が柔らかいうちに針金などで曲げ付けておけば幹模様のいい種木がたくさんできるので、剪定枝を挿して挑戦してください。

取木もできるので、もの次第では短い期間でいい盆栽素材が出来上がります。

トショウの花

杜松の花

トショウは枝を伸ばすと小さい花(球果)を付けることがあります。

雄花は4月頃に開花し花粉を飛散させますが、樹勢が弱る原因にもなるので早いうちに摘み取っておいてください。

ピンセットを使えば比較的簡単に取れます。

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コメント

夏音 さん 2016年05月05日11時42分
はじめまして。
いつもたいへん参考にさせていただいています。

お忙しいところ申し訳ございませんが、お教え頂きたいのです。

実は先日、トショウを購入しました。
とても小さな素材です。

ところがトショウには、立ち性と這い性があって、性質や管理が違うとのこと・・・・
そうです、自分の所に来たトショウが、どちらの性かわからないのです。

今は直幹状にまっすぐの挿し木素材なので、更にわかりません。

見分け方などあるのでしょうか?
きみ さん 2016年05月05日13時08分
夏音さん
はじめまして、確かにトショウはネズとハイネズがありますね。大きな盆栽には立ち性のネズ、小さいのにはハイネズが向いています。
たぶん、それはハイネズのほうじゃないでしょうか..
普通ハイネズはネズより葉に丸味があるというか肉厚な感じがします。触ってのそれほど痛くないです。立ち性の方が枝が硬く痛い。
立ち性這い性だから全然管理方法が違うということはないのですが、ベテランの間でも「突然枯れる」と言われるトショウ。ポイントは自生地の環境を考えることです
関東以北の涼しいところなら、その環境を考えて置き場を工夫します(でも、普通売っているトショウは『トショウ』としか書いてないので分らないんですよね...)
小さいということですし直射日光の当たらない明るくて風通しのいい場所において、水と肥料が結構すきなのでしっかり与えて下さいね。
挿木して根がしっかり伸びているなら肥料与えていいです。
根が張ってないうちはたくさん肥料はいりません、うすい液肥からで十分です
夏音 さん 2016年05月06日15時23分
きみさん、ありがとうございます。
とても参考になりました。
様子を見ながら、育ててみます。
オカメ さん 2016年09月01日12時17分
初めまして。
最近盆栽に興味を持った初心者です。
トショウの挿し木についてお聞きしたいのですが、
祖父が好きで育てていた木がたぶんトショウで、我が家でも育てたいと思い、挿し木で…と思ったのですが、挿し木に関して知識が無く、とりあえず剪定した小枝(新芽に近い部分)を持ち帰って挿してみています。
一応2ヶ月程経過しても枯れていないのは、まだ生きているという事でよいかと思うのですが、発根したかどうかはどの程度で確認できるものでしょうか??
挿したものを土から出して見たりしたら死んでしまうんじゃないかと不安です。見てもいいものですか??
発根の目安など教えていただきたいです。
きみ さん 2016年09月02日19時09分
オカメさん
こんばんは~。トショウは今時期でも炎天水挿しできるくらいなので発根は比較的簡単だと思っています(適期は8月)。
ただその時期というかタイミングですが、今の状態は単に切り口から水を吸っていて緑が生きているだけだと思うので、掘り起こしても根は出ていないかと。基本的には来春新芽が伸びてきたら確実かと思います。小枝なら挿してしばらく走らせると思うので、芽が伸びてきたら根を傷付けないように駄鉢に移して養生させるか、挿したまま2~3年そのままにしていたらいいと思います。
オカメ さん 2016年09月04日21時29分
きみさん、ありがとうございます!
トショウって水挿しもできるんですか!知りませんでした^^;
このまま生き続けるか不安でもあるので、次回祖父宅へ行ったら、もう一枝もらって水挿しも試してみたいと思います。
今挿しているものは、とりあえず現状維持で様子見てみます。

あと、ふとトショウの事で思い出したのでもう一点お聞きしたいのですが、トショウに立ち性と這い性があるのをこちらで初めて知りました。
今祖父宅に残っているのはまだ樹高5~60㎝ほどで、葉はチクチクしますが、這うまではいかないけど…上に向かってるのかしら??という、曖昧な感じです。(ちなみに祖父が大事にしていたトショウは、松のように立派なものだったのですが、亡くなる前に本人が切ってしまってます)
できれば私も祖父がやっていたような模様木に挑戦したいのですが、立ち性ではやはり大物盆栽じゃないと難しいでしょうか?逆に、這い性だった場合、這い性のトショウでも模様木は可能なのでしょうか??
トショウ、ネズの盆栽の情報ってあまり探せず参考に出来るものがなくて(^_^;)
再び質問してしまってスミマセン。
きみ さん 2016年09月04日22時09分
オカメさん
『炎天水挿し法』というのはトショウにできる方法ですが、実際は水挿しするわけでなく挿し床に腰水をして直射日光下で管理します(実際はやはり遮光したほうがいいと思われます)。

這性でも芯をしっかり立てればある程度好きな樹高に作ることもできると思います。
ただ立性の性質を無視して無理に下げたり、這性の枝をいくら立てても徒労に終わると思うので、お持ちの素材の特性をよく観察して合った樹形作りをしたほうが元気に育つのではと思います。
オカメ さん 2016年09月19日15時15分
お返事大変遅くなってしまいましたが、再度回答ありがとうございます!!

あれから、さっそく何枝か頂戴してきて挿してみてます。
水挿し法と名前にあれど、実際に水に挿すわけではないんですねぇ^^;無知で恥ずかしいです^^;

枝をもらう際、やはり松のように痛かったので、立ち性のものと思われます。
まずは発根・発芽がうまくいく事を祈り、樹形はその後にすることにします。

何度もありがとうございました!!
ヤマザキ さん 2017年12月11日17時51分
幹に、テッポウムシが、入れば見てわかりますか。 入れば、消毒わ何を使ったらいいですか。
きみ さん 2017年12月14日11時25分
ヤマザキさん
虫がいそうなんですか?
幹に小さい穴が空いていて、周りに排泄物が見えると思います。
樹皮でよくわからないときは、怪しいところだけナイフなどで少し削ると分かりやすいです。

https://bonsai.shinto-kimiko.com/kanri/byougaicyu/bonsai_gaicyu.htm
こちらを参考にしてみてください。

宜しくお願いします。
すぎ さん 2018年02月22日07時13分
杜松について教えてください。
今の時期に緑の葉がパラパラと落ちてしまいます。
なぜでしょうか…
水を切らしたりしたからでしょうか?
もう回復しないのでしょうか?

よろしくお願いいたします。
きみ さん 2018年02月22日09時23分
すぎさん
緑の葉の状態で落葉してしまうなら、何かが問題で弱ってしまったんでしょうね
杜松はわりと寒害に弱いほうなので、どのような管理をしていたかにもよります
環境の変化に弱いし、よく分からないうちに突然枯れてしまうこともあります。
どのくらい水切れさせたのかわかりませんが、一度調子崩すと回復の難しい樹です。

春以降になればもしかしたら芽が吹いてくるかもしれないので、保護して様子みてください。
すぎ さん 2018年02月22日20時02分
お返事ありがとうございます!
春まで保護して様子を見てみます。
ありがとうございました。
紅玉 さん 2018年04月18日21時41分
杜松の盆栽はなかなか見かけないもので、教えて下さい!
杜松の盆栽をようやく見つけ購入したのですが、冬に関東地方で購入し、北国へ持ち帰り、冬の間はベランダで風除けを作って乗り越えました。
ですが、最近暖かくなってきたからと、外へ出したら、だんだん白茶けてきて、一部茶色っぽくなってしまっっています(涙)
これは瀕死の状態なのでしょうか?茶色っぽくなってる葉を触ってもポロッと取れる感じは無いです。
ちょっと肌寒い日もあったので、寒さ&乾燥にやられてしまったのでしょうか??
ここから持ち直すことが可能なのか、とても心配です。

なんとか助けたいので、対処方法ありましたら、教えて下さい!
きみ さん 2018年04月19日09時17分
紅玉さん

うーーーんどうなんでしょうね。トショウは寒さに弱いところありますから、環境の変化についていけてないのかもしれないですね。北国でトショウ育てるのは難しいのかもしれません。
管理方法や病気などいろいろな原因が考えられるので断定できません。
フトコロの葉が茶けてくるのは古葉なので心配ないと思いますが、全体がそうなってくるとそのまま枯れちゃうことが多いと思っています。新しい芽が吹いていたらまだいいんですけどね。その状態で多肥多水は避けて下さいね。
トショウがお好きなら、挿木した素材とかから始めたほうが楽しいですよ。
紅玉 さん 2018年04月19日23時10分
お返事ありがとうございます!

庭木では何件か杜松見かけていたので大丈夫かな?と思ったのですが、やはり鉢植えだと寒さに負けやすかったのですかね~(汗)

新芽ですが、庭にある赤松も、杜松と一緒に買った盆栽の八房黒松も、まだ新芽出てないので、もう少しかかるかな…早く出ないかな♪と思っていた矢先の白茶けだったので、これから新芽が出ることがあるのか…。

水は苔の様子見ながら与えてみてます。
肥料はまだ負担かと思って与えていません。

奇跡的に助かることを祈るしか無いみたいですね~(涙)
きみ さん 2018年04月20日08時29分
紅玉さん
そちらはまだまだ新芽が出ないんですか~こちらとはまた全然状況が違うのですね。
やっぱり寒さに負けてしまっているのかもしれないですね。
温かくなったからと急に外に出したのがいけなかったかもしれません。
元々枝枯れしやすい樹だし、植え替えも難しいので慣れてからでないと持ち込みが難しい樹だと思っています。
夢一心 さん 2021年07月31日20時18分
挿し芽をしたいのですが、時期は6月頃がよいと教えられていますが、今(8月・9月)でもよいか。挿し穂はどの程度の太さまで可能か。
きみ さん 2021年08月01日16時31分
夢一心 さんへ
成績がいいのはやはり6月頃でしょうけど、トショウやシンパクは炎天水挿しとかするくらいですから、いくつかは上手くでるのではなでしょうか

割と太い枝でも結構発根しますよ