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植物の構造

これから学ぶ盆栽技術の理論を理解するうえでは、植物の構造や生体活性について知っておくのは大切なことだと思います。

このページでは植物学や種木の作られ方について説明します。

植物の組織学

枝の剪定や、改作のための作業を行おうとするとき、せっかくの盆栽を枯らしてしまうようなことにならないように、その植物の組織学的知見を抑えておきましょう。

葉の組織構造

植物の葉は、あとにも書きますが光合成の働きやガス交換、水分を蒸散させる場所です。

導管は根から吸い上げた水を体内に送り、合成した栄養分は師管から全体へ運搬する役割を持っています。

気孔は光合成が盛んに行われる日中に開き、葉から水を蒸散させるとともに光合成に必要な二酸化炭素を吸収しています。

日中の気温が上昇する夏場は、水分を葉の気孔という器官から蒸散させることで、周りの温度を下げて植物自体が生育できる環境を作り上げています。

葉の断面組織構造

図:葉の断面組織構造

維管束の構造

維管束とはシダ植物と種子植物の茎の中を縦に走っていて、水や養分を運搬している組織束のことです。

これらは分岐して枝は葉に伸びていて、植物の機能的支持体でもあります。

双子葉植物では一定の配列で下絵のような構造になっていて、形成層を通って維管束が並んでいます。

形成層は、維管束の木質部と師管部の間に存在していて、たえず活発に分裂活動を行っている細胞層です。

この形成層の働きを利用して枝や根を接ぎ、盆栽たね木の繁殖や改作技術などに活かしています。

維管束

図:双子葉植物の維管束の構造

植物の栄養学

光合成

植物は、葉で養分を作っています。

太陽の光を浴びている時は、根から吸収した水と、空気中の二酸化炭素から植物の成長に必要な栄養分C(炭水化物)を合成し、植物全体へ運搬されます。

副産物として生産された水と酸素は、葉から体外へ排出され、この酸素は私たち人間の生命活動にも欠かせないものとして、地球上を覆っています。

この光エネルギーにより、二酸化炭素を吸収し、炭水化物を合成して酸素を排出する一連の生体反応を光合成といいます。

植物の光合成と呼吸

枝を剪定すれば、葉も少なくなりますので、そのままでは植物の生育は低下します。

そこで植物は今の生命活動を維持するために枝を伸ばし、葉の量を確保しようとします。

せっかくある枝を剪定で切ってしまうのはこの生体反応を利用したもの。剪定によってほしいところに胴吹き芽をださせ、盆栽として持ち込んでいきます。

頂芽優性

植物は葉の働きで生命活動を維持しているので、葉を失えば次の葉を伸ばす準備をしていて、葉の基部に必ず芽を持っています。

何かの事故によって、葉を失えば次の葉がでるようにスタンバイしていて、葉の枚数だけ芽を備えています。

でも、すべての芽が葉になるわけではなく、日照条件のいい部分だけが葉になることができます。

そこで植物はすこしでも陽の光にあたるように、太陽の方向に向かって枝を伸ばす性質をもち、先端で多く陽にあたる部分の芽が強い芽となって勢いよく伸びることになります。

これを頂芽優勢といいます。

盆栽各部の名称

盆栽は下図のように、各部の作りを示す名称があります。

各部分は盆栽樹形においてそれぞれ重要な役割を持っているので、その名称を覚えておきましょう。

それぞれの名称と観賞点を押えることで樹形の理解にも役立ち、盆栽展などで作品を観るときの楽しみ度も格段に違ってきます。

盆栽各部の名称
  1. 樹芯(頭):盆栽の頂部。模様がはっきりしていることが樹格を左右します。
  2. 樹冠(梢):樹の先端の部分(樹冠)のこと。成長点でもあり、懸崖作りを除いて、その樹の最も高い部分。
  3. 樹高:根張りから樹芯(頭)までの高さ。
  4. 根張り:表に現れている根の部分、その張り方。
  5. 立ち上がり:根張りから幹に移る部分。根張りの力強さを受けて幹に移る個所なので、重要な観賞点。
  6. :立ち上がりから上に行くほど自然に細くなる様子を「コケ順が良い」という。
  7. 一の枝:一番下の枝(下枝)。盆栽の枝の中で最も重要な枝。
  8. 二の枝:一の枝の上にある枝。一の枝の反対側に作る。
  9. 三の枝:下から三番目の枝。奥行きを出すために裏に作ることも。一の枝、二の枝のように、樹形の骨格を作る主要な枝を役枝という。
  10. 枝棚:格役枝の枝先の一固まりのこと。

盆栽で嫌われる忌枝

盆栽を持ち込んでいくうえで不必要な枝や、美観上好ましくない枝を忌枝(いみえだ)と呼んでいます。

役枝として残す場合もありますが、大抵はそのままにしていると通風も悪くなるし、全体の調和を崩してしまうので見つけたら始末します。

忌枝は生え方でいろいろに呼ばれていますが、早めに処理しておくべき忌み枝は以下の通りです。

車枝(くるまえだ)

車枝

幹の一カ所から車の軸のように多数の枝が出ている状態で、樹勢の強い種木に多くみられます。

そのままにしておくと、枝の付け根が盛り上がって異常に太くなってしまいます。

車枝になっている部分は、早い段階で全体の枝のバランスを見ながら1~2本だけを残すように枝を基から切ります。

枝の付け根が盛り上がってしまっている場合は、深めに切り込んで癒合剤で傷口を保護しておいてください。

車枝になっている五葉松の若木などは、これを活かして適当な箇所で取木をすれば株立ち樹形の素材を作ることもできます。

※車枝になりやすい樹種:ゴヨウマツの若木、ミヤマキリシマ、サツキなど

閂枝(かんぬきえだ)

かんぬき枝

幹に閂がかかったように左右に並行して出ている枝のことをいいます。

このままにしておくと、幹の途中が盛り上がって見た目が良くありません。

これも全体の枝のバランスを見ながらどちらか一方の枝を基から切って整理します。

枝の付け根が盛り上がってしまっている場合は、深めに切り込んで癒合剤で傷口を保護しておいてください。

閂枝になりやすい樹種:ゴヨウマツ、エゾマツ、クロマツ、八房トショウ、シンパクのたね木、モミジ、カエデ、ケヤキ、ブナ、ヒメシャラ、ソロなどの雑木類

立ち枝(たちえだ)

立ち枝

幹や枝から垂直に立ち上がる枝で、上向き枝ともいいます。

雑木類に多く見られます。

そのままにしておくと樹形が崩れ、他の枝の生育が悪くなりますので切り取るか針金をかけて向きを修正してください。

立ち枝になりやすい樹種:カエデ、ケヤキなどの雑木類

下がり枝

下がり枝

枝から下向きに出る枝のことで、下向き枝ともいいます。

樹形を大変損ねてしまうものなので、立ち枝と同様に整理してください。

前枝(まええだ)

前枝

幹から直接、前にでている枝です。

目立つし幹肌の美観を損ねてしまうので、枝を取ってしまうか、針金をかけて左右のどちらかに寄せます。

幹切り枝(みききりえだ)

幹切り枝

幹の前を左右に横切っている枝です。

幹の美しさを大変損ねてしまいますので直ちに切るか、針金で直してください。

絡み枝(からみえだ)

絡み枝

枝が伸びて他の枝と絡んでしまっている枝です。

枝の基で絡んだものはどちらかの枝を基からとります。

先の方で絡んでいるものは、小枝先で整理します。

絡み枝になりやすい樹種:ピラカンサ、雑木類

逆さ枝(さかさえだ)

逆さ枝

小枝が、外の方向に伸びずに幹の方向へ伸びてまった枝のことです。

逆さ枝に力がいくと枝先が枯れてしまうことがあるので切り取るか、針金で流れを修正してください。

平行枝(へいこうえだ)

平行枝

近い位置で同じ方向に並行に伸びている枝です。

樹形を損ねますし通風性も悪くなりますので全体のバランスをみてどちらかを切り取ります。

若木の場合は予備枝として残すこともあります。

蛙叉枝(かえるまたえだ)

蛙叉枝

カエルの後ろ足のようにU字形に伸びた枝です。

美観上よくないので元から切り取るか、針金で修正してください。

絡み枝になりやすい樹種:シンパク、ヒノキなど

葉と枝のでかた

互生(ごせい)

互生

枝は交互に出ます。

葉も同様に相互に付きます。

互生の枝は若木の時から交互に出ます。

双生(そうせい)

双生

枝は1カ所から2本出ます。

葉も同様に対になって付きます。

双性の枝は若木の時は向きあって出ますが、古木になるにつれ通風や採光などが影響して、弱い枝は枯れて、互生に近づいてきます。

輪生(りんせい)

輪生

枝は1カ所から数本(3本以上)でます。

葉も同様です。

輪性の枝は1カ所から数本以上でますが、条件が悪い枝は弱り、互性に近くなります。

葉のでかたと枝のでかた

植物の葉のでかたは種類により違いがあり、葉のでかたがそのまま枝のでかたにも反映します。

自然環境の樹木の枝は、若木の時は双生や輪生でも、枝の重さで折れたり、日照権や栄養不足などにより弱い枝が枯れていくので自然に互生に近い枝ぶりになります。

このようなことから、盆栽でも枝は交互に出したり、各枝を下げることで古木感を出すようにしています。

種木の種類

盆栽のたね木は実生や挿木などいろいろな方法で生産されています。

その生産の仕方によって、種木の性質も異なりますので盆栽仕立てにおいて考慮しておかなければいけない項目です。

盆栽の種木を購入しようとするとき、その種木がどのようにして作られているのかを知っておきましょう。

種木の種類 概 要
実 生(みしょう) 実生

種から発芽させてしたてる素材です。
地上部と根の調和が取れているので作りやすいものです。
しかし仕上がるまでにかなりの年数がかかるため、ケヤキ、モミジ、カエデなど生育の早い樹種に使われることが多いようです。

挿 木(さしき) 挿し木

親木の枝を土に挿して発根させてしたてる素材です。
挿木にした場合は、直根がないので根の伸びが平均しており、盆栽で重要な根張りが作りやすいのです。
しかし地上部と根の調和が取れていないため、保護の必要があります。

接 木(つぎき) 接ぎ木

性質の強い台木に枝を接いでしたてる素材です。
種子のできないものや挿木の難しいものに使われます。
幹ができているので、完成も早く改作技術にも応用されます。
しかし、接ぎ口が目立ちやすいという欠点があり、これを隠すために苦心が払われます。

取 木(とりき) 取り木

親木の幹から発根を促す処理をし、後に切り離してしたてる素材です。
発根を待ちながら剪定も可能で、ある程度の樹形に仕立てることができます。
切り取ってからは早く根を張らせないと冬の間に衰弱してしまいますので注意が必要です。

株 分 け(かぶわけ) 株分け

ボケなどのように、直立せずに枝が何本も立つような株立ちの植物において、根を分けて素材とするものです。
ひとつの親木からいくつもの素材を仕立てることができます。
高山性のものでは、主幹を切って横芽を芽吹かせる必要があります。

山取り(やまどり) 山取り

庭や野外に植えられているものを採集して利用する素材です。
この場合すぐに掘り上げるのは危険で、根付けを図ります。
2~3年かけて根切りをし細根をださせ、不要な枝も剪定しておきます。
掘り上げてからも力がつくまでは施肥や剪定、針金整枝などはできません。

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東京都世田谷区在住の盆栽趣味者。
自宅ルーフバルコニーで小さい盆栽や草を弄っています。
初代愛猫『アロ』は天国へ行ってしまいましたが、現在は2代目ネコ2匹を迎えて盆栽ライフを楽しんでいます。

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