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盆栽と植物ホルモンの関係

植物の成長は、私たち人間と同じようにいろんな微量ホルモンが複雑に共同し作用しています。

この代表的な植物ホルモンのひとつにエチレンという伸長ホルモンが存在していますが、 エチレンは接触刺激に反応して生成を高めることが知られています。

森の中で隣接した木々が互いの領域を譲り合っているように、新しい枝は接触したときに局部的にエチレンを生成しその方向への伸長をやめます。

反対になんの妨げも受けていない枝は、すくすくと伸びて領域を拡大していくのです。

このような植物ホルモンの働きによって、目を持たない植物は互いに共存する自然の秩序を守っています。

風が創り出すいろいろな樹形

風の強い沿岸に自生する樹の姿
Nature of Bonsai

私の地元、唐津の虹の松原の松は、絶え間なく吹く海風(物理的刺激)にさらされて、自然樹ながら盆栽のように屈曲しています。

今にも倒れそうに這って生えている老樹の醸し出す風情は素晴らしいものです。

他にも松島の松、三保の松原の松など厳しい自然に耐えながら自生している植物の姿は、今にも朽ち果てていく物悲しさや美しさを感じ取ることができます。

盆栽はこのような自然樹の姿を模写するように、枝を曲げたり剪定したりして人工的に刺激を与えその樹の成長を調節しているのです。

盆栽作りはスキンシップ

植物は触るとストレスを感じてそれ以上伸びなくなる。

盆栽のさまざまな樹形は、この原理を利用して作られています。

剪定や針金かけだけでなく、葉水を打ったり幹肌を歯ブラシでこすったり、土を硬く締めるたりするのは、その物理的刺激により生成されたエチレンの作用で縦方向の伸張を抑制し、横に肥大する原理を巧みに利用しているのです。

また、エチレンの働きは伸張を抑制するだけでなく、花物類や実物類の場合は花芽分化も促進させますから、花芽分化期を頭にいれた剪定や施肥も大切です。

毎日触れることで盆栽は小さくなります。

人間関係だけでなく、盆栽にもスキンシップは大切なものなのかもしれません。

主な植物ホルモンとその働き

エチレン

エチレンの生理作用は広く多様で、その発現の仕組みについては不明な点が多く残っていますが、植物体内で細胞成分の金属(胴)と結合して作用するものと考えられています。

代表的な働きは、茎の成長の阻害や肥大成長促進、開花の促進などがあります。

エチレンは気体ですが、植物組織外に放出する時に胴を含む受容部位で代謝されます。

エチレンの中間代謝物(酸化エチレン)の殺菌力は大変つよく、外部からの微生物の侵入を防ぐ働きをしています。

ちなみにこのエチレンの生成過程にオーキシンが促進的に作用していることが分かっています。

エチレンの作用

成長の促進と抑制、側枝の伸張促進、肥大成長促進、小枝の発生促進、開花の促進、果実の成熟促進、葉・花または果実の脱離促進、葉緑素の分解促進、呼吸作用の促進、タンパク質合成の促進、老化促進、雄花の雌花化、球根の休眠打破、耐病性の増大など。

オーキシン

オーキシンを最初に発見した人物は、『種の起源』で有名なダーウィンです。

ダーウィンは、なぜ芽生えは光の方向に曲がるのか不思議に思いオーキシンの存在を突き止めました。その後の研究の結果、オーキシンにはほかにもいろんな働きがあることが解ってきました。

オーキシンは若い茎での成長促進作用を示す植物ホルモンで、エチレンの生成とも関わっています。オーキシンは芽の先端に生成され、サイトカイニンと共同して細胞分裂促進作用を発揮します。

若い枝が伸長する春にもっとも多く存在し、頂芽の伸長を旺盛にする一方で側芽の伸長を抑える働きもしています。

そのため頂芽を切ると、側芽の伸長を抑制していたオーキシン効果がなくなるので側芽は伸長成長を始めるようになります。

このとき、オーキシンは切られた芽から下方向へ移動し、一番近い方の側芽の先端へと生成されていきます。

オーキシンの作用

茎や梢葉の伸長、側芽の伸長抑制、光や重力による屈曲、不定根や分岐根の生成、根の伸長の抑制、木部の分化、果実の成熟、落花抑制、形成層の活性、葉の老化

ジベレリン

イネの穂が異常に伸張し、穂を出さずに枯れてしまうバカナエ病について研究していた日本の研究者が、1926年にそのバカナエ病菌を培養・単離して発見し、バカナエ病の学名(Gibberella fujikuroi)にちなんで命名されたのがジベレリンです。

ジベレリンはその後多くの植物の未熟種子や徒長枝から見つかり、植物界に広く分布し、植物の成長発育に重要な役割を果たしていることが分かりました。

ジベレリンの生理作用の特徴は、普通に生育している植物の生長を促進することです。

成長中の部分の伸張成長だけを促進し、同時に側芽の生長を抑える働きもしています。

日が長くならないと花芽が形成されない長日植物にジベレリン処理をすると、短日条件でも花芽が形成されることや、発芽に光が必要な種子の暗条件下での発芽を促進することも知られています。

とくに、ジベレリンがブドウの単為結果(受精なしで果実の肥大成長)を促進する作用をもっていることは有名で、種なしブドウの生産に大変役立っています。

ジベレリンの作用

成長中の部分の伸張成長促進、花芽形成促進、花粉の発芽促進(自家不和合成植物への結実)、単為結果(ブドウ)、側芽の生長抑制

サイトカイニン

1920年ころから、植物の組織培養の研究が盛んになり、カルス(未分化細胞)を増殖する物質を単離して発見されたのがサイトカイニン(細胞分裂促進物質)です。

サイトカイニンの作用にひとつは、葉の老化を抑制しいつまでも緑色を保つことが挙げられます。

サイトカイニンは主に根で生成されて地上部に送られますから、根が元気でサイトカイニンの生成が盛んであればいつまでも葉を綺麗に保つことができるのです。

また、サイトカイニンには栄養分を積極的に集める性質や葉の蒸散促進、レタス・たばこ・オナモミなどの種子の発芽促進、リンゴの単為結果、ブドウの着果促進、果実の肥大成長促進など多岐に渡る作用を持っていると言われています。

サイトカイニンの作用

老化防止、蒸散促進、側芽の伸張促進、種子の発芽促進、単為結果(リンゴ)、着果促進(ブドウ)、果実の肥大成長促進

アブシジン酸

果実の落果に関係する物質として、綿の離層形成促進物質から最初に単離されたものがアブシジン酸でした。

別の研究で、シラカバやカエデの休眠物質の単離に成功した休眠物質と同一の物質だということがわかり植物界に広く存在しています。

アブシジン酸はオーキシンやジベレリンなどの成長を促進するタイプと違って、抑制型の植物ホルモンです。主に緑葉や果実で生成され、葉から茎、頂部など他の器官へ転送されます。

主な働きとしては、葉や果実の脱離や種子や芽の休眠誘導があります。

また、アブシジン酸はストレスホルモンとも呼ばれていて、葉の気孔を閉じて蒸散を防ぎ、乾燥や寒さに対しての耐久性も示すなど、不良環境では成長をいったん停止して、じっと耐える必要があるときに作用することが分かっています。

アブシジン酸の作用

葉や果実の脱離、種子や芽の休眠誘導、不良環境下(乾燥・灌水・高温・低温・栄養欠乏など)での耐性、気孔の閉口促進、蒸散抑制

ブラシノライド

ブラシノライドは珍しく動物の性ホルモンと同じようなステロイド骨格をもっていて、アブラナ(ブラシカ属)から発見されたことからその名がつけられました。

ブラシノライドは他の植物と比較しても非常に低い濃度て活性を示し、インゲンの節間生長をごく低量で促進し、高濃度では茎の肥大を促進するという特徴があります。

また、他の植物ホルモンと相互に関係し、オーキシン活性やジベレリン活性、サイトカイニン活性効果も持っていると言われています。

アブシジン酸と同じように、不良環境耐性効果も持ち、低温下での生育促進も確認されています。

ブラシノライドの作用

枝の伸張生長促進、茎の肥大、他の植物ホルモン活性、不良環境での耐性活性、着果促進

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東京都世田谷区在住の盆栽趣味者。
自宅ルーフバルコニーで小さい盆栽や草を弄っています。
初代愛猫『アロ』は天国へ行ってしまいましたが、現在は2代目ネコ2匹を迎えて盆栽ライフを楽しんでいます。

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