黒松(クロマツ)の魅力

黒松

クロマツは本州以南の海岸から内陸部まで広く分布があり、照葉樹林帯の構成樹として、シイやカシと混生している姿が見られます。

潮風によく耐える性質を持つため防風樹として古くから海岸線への植樹が行われていて、日本各地の海岸を中心に自生化し、特に砂浜のクロマツ林(白砂青松)は日本の美しい海岸風景を代表するものとして古くから親しまれてきました。

四季を通じて緑を失わず、荒れた幹肌や堅固な葉を持ち、塩害にも負けない剛健なクロマツは、別名をオマツ(雄松)とも呼ばれ、百樹の王として格式高い盆栽の代表樹種として多くの人に愛培されています。

盆栽の神髄のような存在でありながら、種や苗木の入手が容易で、実生や細い苗木からでも本格盆栽作りに挑戦できるところも魅力。

気温や環境の変化に対する適応力があり、丈夫で育てやすいところが好まれます。各地にいろいろな地方種がありますが、盆栽では三河黒松(愛知県岡崎市)や四国黒松(香川県高松市)、玄海黒松などが有名で、葉が短く丈夫で幹肌の荒れ方もよいとされます。

クロマツの特徴

クロマツを始めとするマツ類の特徴はなんと言っても固くて細長い葉です。

中でもクロマツの葉は固く、短葉法(芽摘みや芽切り、芽かき、葉すかしなど)で短く締った葉組みを作ることで、より盆栽としての見た目もよく全体にバランスの取れたものになります。

クロマツの新芽(ミドリ)

クロマツのミドリ

クロマツのミドリ:4月初旬頃(東京)

クロマツの新芽は4月~5月頃になると伸びてきます。

マツの新芽はミドリと言われ、白い産毛のような鱗片で覆われたつくしの様な形状をしています。

マツ類の1年間に伸びる枝の長さは、このミドリが伸び始める時期にはもう決まっています。

ミドリを伸ばしたままだと枝が間延びして樹形が乱れてしまいますから、ミドリの状態のうちに適当な長さで芽摘みをする必要があります。

クロマツの幹

クロマツの幹

クロマツの幹

クロマツの荒々しい幹肌は木に古木感や大木感を与えます。

特にクロマツは幹が古くなるのが早いので盆栽樹種として好まれます。

成長が遅いので樹形は崩れにくいですが、その反面一度大きな剪定跡を残すと治りにくく、傷の位置によっては盆栽としての観賞価値を著しく悪くしてしまいます。

不要枝や忌み枝は傷が小さいうちに処理できるように、仕立ての段階で早いうちに整理されます。

クロマツの繁殖法

クロマツの実生

クロマツの実生:5月初旬頃(東京)

クロマツの種木は主に実生で作られています。

春に撒けば10日ほどで発芽しますから、数年は寄せ植えなどで楽しむことができます。

挿木や取木も可能ですが発根の難しい系統があり実生ほど作られていません。

昔は山取りが多く行われていましたが、環境保全の観点から難しくなってきました。

現在は実生の種木が多く、実生苗を山や畑で栽培し太らせたものが市場に出ています。

クロマツの主な樹形

クロマツは樹勢が強く、針金整枝にも良く耐えるのでいろいろな樹形に仕立てることができます。

主な樹形は直幹や斜幹、模様木、懸崖、半懸崖、石付き、吹き流し、文人作りなどです。

系統によりますが取木や接ぎ木もできるので改作も可能です。

どの樹形でも、クロマツの特徴を活かした力強い感じを持たせるような姿作りが似合います。

病気・害虫

松柏類は他の樹種と比べて病害虫は少なく、仮に発生しても大きな被害になりにくいのですが、稀にアブラムシ(マツオオアブラムシやマツホソオオアブラムシ)やカイガラムシ(マツコナカイガラムシやマツモグリカイガラムシ)の他、マツカレハ(マツケムシ)、マツノシンクイムシ等が付くことがあります。

また、梅雨頃から秋口にかけては「すす葉枯れ病(すす病)」や「葉ふるい病」などが発生することがあります。

すす病は主に吸汁性害虫によって引き起こされる病気なので、定期的に殺虫剤を散布して予防してください。葉ふるい病は葉に淡褐色の病斑が出て最後には落葉する病気で、カビの仲間によって引き起こされます。

マツ類の病気は培養環境の悪化や、長雨の影響などで樹勢が落ちた樹に発生しやすいので、日頃から日当たりと風通しの良い環境を整え、樹勢を落とさないような管理を心がけることが1番。

病気の防除にはマンネブダイセン水和剤やキノンドー銅水和剤などの殺菌剤を定期散布してください。

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