盆栽の夏の管理

夏の間は強い光線と気温の上昇に加えて水もよく乾くので、日よけ対策や灌水に気を遣う時期です。

近年は温暖化の影響で5月以降から夏の気温は特に厳しく、適切な対策なしでは盆栽に大きな害がでます。

盆栽樹種で夏の暑さに耐えられないものはそう多くありませんが、小さい山野草や高山植物、エゾマツ、カラマツなど涼しい地域に自生している樹種は注意が必要です。

盆栽は基本的に外で管理するものである以上、自分の棚場の夏の気候に耐えることができる樹種を選ぶことは大事です。

東北や北海道地方に自生する植物を九州南部で育てるのには無理があります。

しかし植物はある程度ならば環境変化に適応できる力を持っているので、工夫次第で夏超し可能なものも多くあります。

夏に弱い樹種

盆栽樹種の中には夏の強い光線や高温に弱いものがあるので寒冷紗やすだれ、ヨシズで遮光し温度を下げる対策が必要です。

特に葉焼けを起こしやすい葉物類、東北地方の高山帯に自生する樹種、高山性の植物などは夏の日差しから保護する必要があります。

また、暑さに強い樹種でも小さい鉢で育てているものは被害が出やすいので、強い光線に直接当たらないようにしてください。

夏の管理に注意が必要な樹種

①夏の光線で葉焼けを起こしやすいもの
カイドウ、モミジ、カエデ、ケヤキ、ソロ、ブナ、ハゼ、イチョウ、ヒメシャラ、サクラなど
②東北地方や高山帯に自生するもの
エゾマツ、カラマツ、ゴヨウマツ、イチイ、コメツガなど
③好陰性の植物
アケビ、シダ類、一部の山野草
④植え替えや針金かけをした直後のもの、小品盆栽

日よけの工夫

植物は普通、太陽の光によく当てて育てるものですが、盆樹の中には夏の暑さに弱いものや強光を嫌うもの、葉焼けしてその後の生育に害が出やすいものがあります。

従来は梅雨明け頃から日よけをするのが普通でしたが、最近は5月の連休頃から日差しが強くなるので、5月以降は夏と思って遮光の準備をしてください。

日よけは単に強光を遮るためのものだけでなく、温度を下げて乾燥を防ぐ効果もあります。

炎天下では1日5~6回灌水しないと間に合わないような環境でも、2~3回で済むようになります。

日よけの種類

防風ネットを張っても効果がある

日よけにはポリエチレン製の遮光ネットや、網目の細かい不織布で出来た寒冷紗、竹や葦を糸で結んだ簾(すだれ)や葦簀(よしず)などを使います。

寒冷紗の遮光率は20~30%程度で、ダイオネットなどの遮光ネットは50~70%程度の商品があります。

日よけは単体使用だけでなく、重ねて使用することで遮光率をアップできますので、日差しが強くなるにつれて二重に重ねて使用すると便利です。

いろいろな素材や形状、大きさの日よけがありますが、出来るだけ風が通り真夏の遮光率が50~70%くらい(日当たりによる)になるものがよいと思います。

梅雨前までなら防風ネットや寒冷紗だけでも充分に遮光できるので、西日や強風、害虫対策に常時取り付けていてもよいでしょう。

①遮光ネット

ダイオネットなど、ポリエチレン製の細くカットされた繊維を平織りで編んで作られたもので、軽量で耐久性に優れています。

園芸や農業用にも使われるタイプのもので、編み目の細かさや色により幅広い遮光率のものがあり、経済的で丈夫なのでお勧めです。

隙間があるので風通しもよく、風に煽らにくい利点もあります。

ハトメがついていると引っ張りや固定に都合がよく、可動式にするなら遮光ネット用のダイオクリップ やロープで工夫できます。

色は黒の他グレー、白など。

②寒冷紗

麻や綿、ポリプロピレンなどの繊維を編んで作った農業用の被覆資材で、遮光や遮熱、防霜、防虫、防風効果があります。

編み目が細かいので風通しはあまりよくありませんが、遮光率20%くらいからあるので重ねて使ったり樹種別に使い分けてもいいです。

必要な大きさにカットできますが、切ったところはほつれやすいので折り返してクリップや糸で止めておくといいと思います。

色は黒やグレー、白など。

③防風ネット

ポリエチレン製の編み目状のネットで、耐久性があり、強風を和らげたり作物を獣害から守る効果があります。

編み目は2mm角(ベランダかぜよけくん)~4mm角くらいまであり、細かいほど防風や遮光効果があります。

5月以降~梅雨前までの太陽光を和らげる程度なら、防風ネットで充分です。

通気性もよいので使いやすくお勧めです。

これも切ったり重ねることができ、夏場も常時周りに張っておけば台風対策にもなります。

色は黒や青、グレー、シルバーなど。

日よけの設置

寒冷紗は通常盆栽棚の周囲に支柱や屋根を組んで取り付けますが、風通しをよくし、温度を下げるためにも出来るだけ高い位置に張るのが好ましいです。

管理がしやすいのは2m~2.5mくらいの高さですが、棚の環境は培養者により様々なので、風に煽られにくく不要な時はしまえるような工夫をしないといけません。

クリップでとめた日よけをロープに通して可動式にしたり、支柱を組んでハウスを作り手動で日よけを開け閉めするなどいろいろな方法があります。

梅雨開けから真夏の暑さは本格化しますが、小さいものは5月~6月頃は20~30%くらいの寒冷紗を使い、夏になるに従って重ねて徐々に遮光率を上げるとよいです。

低い遮光率の寒冷紗を重ねる方法だと、段階的に遮光率を上げられるだけでなく、外す時も徐々に外すことができるので、急な日差しの強さの変化による樹の負担も和らぎます。

ただし、日よけを一日中していると枝が徒長したり、風通しが悪くなって病害虫の被害が出やすくなります。

日よけは基本的に午後の強い光線を防ぐものですから、午前中や曇りや雨の日は外し、通気を良くすると共に夜間も外して夜露が当たるようにしてください。

雨囲いのあるベランダに棚がある場合は夜露が降りないので、寝る前に葉水をかけるとよいです。

夏の水切れ対策

日よけによって乾燥はある程度防ぐことは出来ますが、真夏になったら1日に2~3回、樹種やサイズによっては5~6回の灌水をしなければ間に合わなくなる場合もあります。

1日中家で土の乾き具合を小まめにチェックできる人はあまりいないですから、日中は自動灌水装置を稼働させたり、家族に灌水を任せる手もあります。

また、葉水はダニ予防や葉に付いた汚れを落とす他、鉢の温度を下げる効果があるので積極的にやってください。

自動灌水や家族の助けがない場合は、日よけで囲って湿った砂利や赤玉を敷いた容器に鉢ごと埋めておいたり、腰水をしても効果があります。

川砂利や赤玉に埋めて置くと乾きにくい

この方法なら、数日間の留守でも対応できます。

ただし数日留守にする場合は事前にリハーサルをしておき、よく乾く物とそうでないものを把握し、乾きやすいものはケースに入れるなど置き場所や腰水の量を工夫してください。

夏の施肥

一般的に夏の間は植物の生育が低下するので、肥料もほとんど必要ないといわれています。

しかし、夏の間完全に肥料をやめ、秋にいきなり再開することの害の方が大きい場合があります。

また、夏の間でも肥培をすることで葉色がよくなり、その後の生育もよくなります。

ただし大量の肥料では肥料負けしますから、薄めた水肥やハイポネックスなどの液体肥料を2000倍ほどに薄くしたものを週1回程度与える程度です。

樹種別の夏越し

松柏類の夏越し

松柏類は一般的に夏の暑さや乾燥に強く、特別な保護は必要ありませんが小さいものは鉢が高温になり根を傷めることがあるので注意が必要です。

弱っているものや、強い剪定や針金かけをしたもの、小さいものは西日を避け半日陰で管理します。

また、松柏類でも山地性のエゾマツ、カラマツ、ゴヨウマツやイチイなども出来るだけ涼しい場所に置いてください。

樹 種 夏の耐性、特徴 夏の管理場所
クロマツ ◎暑さや乾燥に強い ・基本的に日なた
アカマツ ○暑さや乾燥に強いが、やや樹勢が弱い ・基本的に日なた
・葉水が効果的
ニシキマツ ◎暑さに強いが、乾燥に弱い ・基本的に日なた
・水切れに注意
ゴヨウマツ ○乾燥に強いが、強い日差しは避ける ・真夏の西日は避けた方がよい
・葉水が効果的
エゾマツ △暑さに強いが、乾燥に弱い ・半日陰の涼しい場所で管理
・葉水が効果的
カラマツ △暑さに弱く、樹勢も弱い ・涼しい日陰で管理
・葉水が効果的
・多肥や過湿に注意
シンパク ◎暑さや乾燥に強い
古葉と同時にスギ葉が出やすい
・基本的に日なた
・過乾、過湿に注意
トショウ ○暑さに強いが、やや乾燥に弱い ・日なた~半日陰
・過湿にならない程度の灌水と葉水が効果的
ギョリュウ ◎暑さに強いが、乾燥に弱い ・基本的に日なた
・水切れに注意
ス ギ ○過湿や過乾、汚染空気に弱い ・日なた~半日陰
・朝夕2回の葉水が効果的
ヒノキ ◎暑さや乾燥に強い ・日なた~半日陰
イチイ △やや暑さに弱い ・半日陰の涼しい場所で管理
コメツガ △やや暑さに弱く、乾燥に弱い ・半日陰の涼しい場所で管理
・水切れに注意

葉物類の夏越し

葉物類は葉焼けを起こしやすく、紅葉が綺麗にならないばかりかその後の生育に害がでるので夏の強光には直接当てないことです。

春の芽が伸び出したら充分日に当てますが、梅雨開け頃から夏の間は日よけを設置し強光から守る必要があります。

葉数が多い葉物類は水を多く消費しますが、日よけによって多少乾きを遅らせることができます。

葉物類は基本的にみな丈夫で育てやすいですが、梅雨の間や台風の後などは病害虫の被害が出やすいので、薬剤散布も大切な作業です。

樹 種  夏の耐性、特徴 夏の管理場所
カエデ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・過乾や過湿に注意
モミジ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い
カエデより樹勢がやや弱い
・半日陰で管理し強光に当てない
・過乾や過湿に注意
ケヤキ △葉焼けは起こしにくいが汚れる、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・過乾や過湿に注意、葉水が効果的
ヒメシャラ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い
風通しに注意
・半日陰で管理し強光に当てない
・枝が混み合っているものは剪定や葉刈りで風通しをよくする
ソ ロ ○日照には強いが、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れに注意
イチョウ △葉焼けはしないが汚れる、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れに注意
ブ ナ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・7月以降は特に水切れに注意
ハ ゼ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れに注意
ク ワ ○日照には強いが、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れに注意
ツ タ △葉焼けしやすく、乾燥に弱い ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れに注意

花物類の夏越し

花物類は夏の間(6月~8月頃)に花芽分化をしますから、よく日に当てる必要があります。

ただしあまり強い日差しや水切れ、強風に晒すと葉焼けを起こして来年の花芽が付かなくなってしまいます。

また、通常花芽分化期は水を控えめにして多くの花芽を付けさせますが、日当たりのいい場所では水が相当に乾きますから過乾には注意してください。

樹 種  夏の耐性、特徴 夏の管理場所
サツキ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
サクラ △葉焼けしやすい、害虫に注意 ・半日陰で管理し強光に当てない
・水切れ注意
ウ メ ◎日照を好む ・日当たりのいい場所で管理
バ ラ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
カイドウ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
ボ ケ ◎暑さ、日照に強い、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
花ザクロ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
フ ジ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
ツツジ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
オウバイ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意

実物類の夏越し

実物類も花物類と同じで、花芽形成期の6月~8月頃にはよく日に当てる必要があります。

ただしあまり強い日差しや水切れ、強風に晒すと葉焼けを起こして来年の花芽が付かなくなってしまいます。

また、通常花芽分化期は水を控えめにして多くの花芽を付けさせますが、日当たりのいい場所では水が相当に乾きますから過乾には注意してください。

夏は果実がとまって落ち着く頃で、余計に水を必要とするので水切れで落果させないよう気を付けましょう。

樹 種  夏の耐性、特徴 夏の管理場所
ヒメリンゴ ○日照、水を好む
西日に弱い
・梅雨明けから風通しのいい半日陰で管理
・水切れ注意
ミヤマカイドウ ○日照、水を好む
西日に弱い
・梅雨明けから風通しのいい半日陰で管理
・水切れ注意
カリン ◎強光に強く、日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
ピラカンサ ◎強光に強く、日照、水を好む
西日に弱い
・基本的に日なた~梅雨明けから半日陰
・水切れ、過湿の注意
マユミ ○日照、水を好む
葉焼けを起こしやすい
・梅雨明けから半日陰
・水切れ注意
ウメモドキ ○日照、水を好む
水切れで葉焼けを起こしやすい
・梅雨明けから半日陰
・水切れ注意
実ザクロ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れ注意
アケビ △強光に弱い ・風通しのいい半日陰~明るい日陰で管理
・水切れ注意
ベニシタン ◎日照を好み、乾燥にも強い ・日当たりのいい場所で管理
・過乾、過水に注意
美男カズラ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・過乾、過水に注意
アオツヅラフジ ◎日照、水を好む ・日当たりのいい場所で管理
・水切れに注意

山野草の夏越し

万年草やツメレンゲなどの多肉植物の仲間は炎天下の乾燥した環境でも元気に育ちますが、ほとんどの山野草は夏の強い日差しに当たると葉や根が傷んで溶けてしまいます。

日当たりのいい場所に置けば葉が締って保ち込みのよいものが出来ますが、水切れしやすく管理が難しくなります。

山野草は春はよく日に当て、夏にかけては基本的に物陰や明るい日陰で管理してください。

また、山野草は苔や他の雑草が生えていると競り負けたり、蒸れて根や地上部が傷む原因になるので綺麗に取り除き、枯れ葉などもこまめに掃除してください。

コメント

山崎勝義 さん 2016年07月17日16時56分
液肥は、夏でも与えていいですか。
きみ さん 2016年07月17日18時41分
山崎勝義さん
内容がなくごめんなさい、すぐ書きます
夏でも与えていいです。
濃いのはよくないです。
佐野由紀 さん 2019年05月30日11時42分
班入白鳥花をベランダに置いてあって、花も葉っぱもとてもかわいく咲いていたんですが、夜中風が強い日があったらしく、朝見たら葉っぱも花も枯れてしまいました。
枝を折ると中心は緑でした。

対処法としてはどうしたらいいのでしょうか?
きみ さん 2019年05月30日14時43分
佐野由紀 さんへ
一晩の強風だけで枯れることはないですから、その前後の日差しの変化や水のやり方に原因があったのではないかと思います。
ベランダはコンクリートの照り返しもありますから、地面に直においたりしてはいけませんよ
今度は日よけの下で涼しく管理してあげるといいですね。水も乾いたらです。
鉢が熱くなっていたり、その時に水をあげてしまうと鉢中で熱湯になって根が死んでしまいます。
元の状態に戻すのは難しいですが、枯れていなければ枝の途中や根元の方から新しい枝が伸びてきます。
ごうちゃん さん 2023年09月19日08時25分
小品盆栽の花芽がつくころの管理方法具体的に教えて下さい。
おおにゅう さん 2023年09月20日07時07分
こんにちは、キミさんのブログやYouTube時々拝見し参考にさせていただいてます。私東京下町なんですが日除けを外すタイミグってどのようにされていますか?よかったら教えてください。
きみ さん 2023年09月21日10時04分
ごうちゃん さんへ

花芽が付く頃は、だいたい夏頃ですから、水切れ葉焼けなどで落葉させないことでしょうか。
この頃の徒長枝は花芽も付きにくいですから、剪定していいと思います。
きみ さん 2023年09月21日10時10分
おおにゅう さんへ

いつも、ありがとうございます!

日除けを外すのは、時期的にはだいたい9月中旬くらいなので外すのは良いタイミングと思います。
曇りの日などに外してあげると、急な環境変化に晒さずにいいと思いますよ。
雨上がり、曇りの今日なんてベストです^^
おおにゅう さん 2023年09月21日11時38分
御多忙の中 早々にありがとうございます。参考にさせていただきます!